ALL IN THE FAMIRY
エネルギー関連の巨大企業ハリバートン社で最高経営責任者を務めていたのは
現在のアメリカ副大統領ディック チェイニーでした。
イラク戦争の直前、国防総省はハリバートンの傘下にあるケロッグ ブラウン&ルート社と秘かに2年契約を結び、
油田消火活動とイラクの石油産業に関わる戦後処理を任せる事にしました。しかもこれは単独入札でした。
ハリバートンが受け取る金額は最高で70億ドル。陸軍工兵隊主任弁護士のアンダーソンは、
油田の被害が予想より少なかったので、利益はかなり下回ると見ていますが、
実際に契約で最低限保証されている金額は公表出来ないと云います。
これは機密の契約だったというのがその理由だそうです。
通常、陸軍工兵隊が油田消火活動を行う場合、契約は競争入札にかける義務があります。
しかし国家の安全に関わる緊急事態にはその手続きを省略し、単独入札に因って請負業者と契約する事が許されています。
ハリバートンの今回のケースは正にその特例が当て嵌められました。
ハリバートン公的事業担当副社長ドミニーは、ハリバートンが世界各地でアメリカ軍部隊の後方支援活動を請け負ってきた為、
今回も仕事が廻ってきたのだと説明しました。
テキサス州アマリロの中小企業GSWは世界各地で油田消火活動をしてきた会社です。
湾岸戦争後、クエート政府の依頼に因り、300ケ所で火災が発生した巨大なブルガン油田の消火を担当しました。
そんな実績があるGSWが、イラク戦争が勃発しそうに思えた2002年9月、
業界の仲間たちと共に、国防総省と議員たちに接触を開始しました。
しかし、2002年12月、国防総省は「イラクにおける油田火災の発生は想定していない」と解答。
その一ヶ月も前に、国防総省とハリバートンは油田消火活動について話し合いを進め始めていたのです。
2002年の一年間で、ハリバートンとケロッグ ブラウン&ルート社はアメリカ政府から13億ドルに及ぶ仕事を受注。
その殆どが、かつてはアメリカ軍がおこなっていたものでした。
ベースキャンプの設営から食糧の調達、洗濯、電気、下水設備まで、
部隊が活動するのに支障が起きない様に何でも請け負います。
アフガニスタン、ルワンダ、ソマリア、コソボにも彼等は赴きました。
軍の仕事を民間に依託する様になったのはチェイニーが国防長官を務めた、90年代のブッシュ政権の時から始まりました。
92年、チェイニーの元、国防総省はケロッグ ブラウン&ルート社に機密調査を依頼。
それは、民間業者に軍の仕事をもっと任せるべきか?というものでした。
この調査結果は勿論YES。それから8年の間に、ケロッグ ブラウン&ルート社と、
もうひとつのハリバートンの子会社が政府から受注した契約は2700件、数十億ドルに昇ります。
それから2年後、国防長官を退いたチェイニーはハリバートンのトップに迎えられます。
チェイニーがハリバートンに罪跡もとい在籍した5年の間に、政府から受注した契約数はそれ迄のほぼ二倍に膨れ上がり、
チェイニーは大富豪になりました。
チェイニーは下院議員、陸軍参謀長、国防長官を歴任してきましたが、ビジネスマンの経験は皆無です。
その政治家が何故ハリバートンという大企業の最高経営責任者になったのでしょうか?
ハリバートン公的事業担当副社長ドミニーは、国防総省とハリバートンとの密接な関係を一切否定します。
「国防総省の規約内容を良く知るべきだ。システムに政治的な力が入り込む余地が無い事が良く判る」
ドミニーはハリバートンに入社して7年。前歴は、陸軍工兵隊の司令官中将でした。
でも、事はこれで全てでは無かったのです。