話がちょっと狂ってる
市村正親「(虚空を見つめて)そうです! わたしが、ハンス!クリスチャン!アンデルセン!!」
ある日曜日、カーレンは、教会の礼拝へ行くのに、ぴかぴかに光った赤いエナメルの靴を履いて出掛けました。
カーレンは、この赤い靴が大層お気に入りだったからです。
ところが、そんなカーレンを見て、周りに人びとは口々に囁き合いました。
「まあ、何て子だろうねえ、教会へ行くってのに、あんな派手な靴を履いて来るなんて」
「神様にお祈りを捧げるのに相応しくない格好だ。きっとバチが当たるに違いないよ」
でも、そんな悪口も、カーレンはちっとも気にしません。
「私の靴が綺麗だから、この可愛い私にぴったりだから、みんなくやしがってるんだわ。
それに、神様だって、綺麗な格好していった方が喜ぶに決まってる」
ところが、教会の前に腰を下ろしていた乞食が、カーレンの姿を見、彼女を指差して云いました。
「何て子だ。そんなにその赤い靴が気に入ってるのなら、一生履いているがいい! そして、一生、踊り続けるがいいさ!」
その途端、カーレンの赤い靴がひとりでに踊り出したのです。
(中略)
精も魂も尽き果てたカーレンは、首切り役人の所へ行って頼みました。
「お願いです。おじさんの斧で、この赤い靴を、脚ごと切り落としてください」
流石に躊躇した首切り役人でしたが、カーレンがあまりに必死に頼むものですから、
狙いを定めて、赤い靴を履いた脚を、斧でドカッ、ドカッと切断してしまいました。
主を失ったカーレンの赤い靴は、それでも踊り続け、何処かへ行ってしまいました。
首切り役人は、カーレンのために、松葉杖を造ってやりました。
その後、教会へ赤い靴を履いて行ったことを心から懺悔し、教会の仕事に奉仕したカーレンは、神様からその罪を赦されたのです。
(赤い靴)
…………納得いかない。絶対に納得いかないこの話。