うわばみ
猟師の才造は、蛇を捕るのが大変上手でした。
蛇が盛んに活躍する夏になると、山に入って、蛇の好物のマタタビ(猫の好物と同じ)を燻します。
その匂いに蛇はおびき寄せられて、才造が待っているのも知らずに出てきます。
才造はその蛇どもを一匹残らず捕まえると、皮をはいで肉を味噌に漬けるのです。
味噌漬けの蛇の肉は、五年経っても腐りません。年数が経てば経つ程、肉はおいしくなるのです。
ですが、女の人は食べられません。
才造には妻がおりました。夫は味噌漬けの蛇の肉を、ひとりで食べているので、
いつか盗んで食べてやろうと、その日が来るのを狙っていました。
その日が遂にやって来ました。
夫の才造の留守を待っていた妻は、ひとくち味噌漬けを食べてみて、そのおいしさに吃驚しました。
後をひく味ですから、次々に口に運んで食べている内に。一樽が空になってしまいました。
こうなると、とても喉が乾きます。
そこで妻は、台所へ行き、水を飲もうと水瓶を覗いて、ギョッとしました。
水瓶の底に、蛇がいるのです。
次に妻は、アッと声をあげました。
その蛇は、水に映ったおのれ自身の姿だったのです。
※食べ過ぎ、呑み過ぎには注意しましょうという教訓を含んだ怪談でした
(「こわい怪談画報 蛇ばみ」)