銀座はザギン、亀戸はメイド、六本木はギロッポン


カストリ雑誌】は、我が国が大平洋戦争に敗戦し、大東亞共栄圏の夢破れ、王道楽土を築くことに失敗した直後の、


混乱した状況下において、発行された雑誌のことを指します。


内容は、エロ・グロ・ナンセンス三昧で、赤線などの色町探訪記事、猟奇事件記事など、


男の興味をそそる様なものばかりでした。


こうした粗悪な雑誌は、発刊しても大抵3号ほどで廃刊してしまうのが常であったため、


「3合呑むと潰れる」と云われた【カストリ酒】にかけた名称だそうです。


【カストリ酒】とは、本来は酒粕から取った焼酎のことらしいのですが、当時、粗悪な密造酒も、こう呼ばれました。


中には工業用アルコール(メチルアルコール)を酒の中に混ぜたものが出廻り、


それを呑んだ人が失明する事件も多発したのだそうです。


メチルアルコールを呑むと、「メがチル」、「目が散る」、「眼が潰れる」と化学の授業で教えて貰いました。


また、戦後統制や物資不足の中で、印刷用の紙が手に入らないため、パルプのカスを漉し取って作った、


ザラ紙に印刷されていたことからも、カストリと呼ばれたのだそうです。



『共楽』(昭和22年発行)内容一部抜粋  ※原文ママ


アムステルダムの大魔窟】


アムステルダム……


あまり馴染みの無い地名が飛出すと、地図の上で探すだけでも、一苦労でせうが、


此処はオランダ中部にある、商工業の中心地で、北海がフリジャ諸島に抱かれて、深く入り込んだゾイデル海の、


その一番奥の方、北海運河へ……(中略)


貴方達なら屹度喜ぶでせう、この、何て言へば分かるかなァ、


早く言やァ女の子を丸裸にして、其奴の股倉を覗くんでさァ、


悲しい哉、日本にはこんな奴は一つも無えんで、アチャラ語では「フォトグラフィーの家」ってんですがね……(中略)


例えばだべ、東京の玉ノ井(キングポイント)か、メイド(亀戸の事)の、あの愛の小窓から覗いている女達が、


若し素っ裸だったとすれば、諸君なら飛んで見に行くでせう(中略)


いつかこんな事が有りましたっけ、賭博の寺銭をチョロマかしてね、


へんな男に貢がうとして、私刑になった娘が有ったんだが、


それもまだ、やっと生揃ったばかりの、場慣れねえ15、6の小娘だったんだが、素っ裸の逆さ吊りは当たり前の事、


あれは酷い見世物でしたよ。


その娘はどうなったかって? もちろん殺されたんですがね。獨逸の娘でしたか。