わたしは真悟と、ライチ 光クラブ


1984年【マーキュロ】、1985年【ガラチア】【ライチ 光クラブ】、1986年【ワルプルギス】と、


僅か4本の芝居公演を残して解散した劇団『東京グランギニョル』。


1986年3月に都立家政で再演された【ライチ 光クラブ】のみを観ることが出来ました。


この時には世間的に認知され始めたというものの(『フォーカス』に取材されたりしてた)、


観客は、黒ずくめの演劇女子ばかりだった記憶があります。




主演は、人造人間ライチに嶋田久作




ライチに誘拐される少女・マリンに越美晴



この【ライチ 光クラブ】は、その当時連載中だった楳図かずおの【わたしは真悟】を下敷きにしており、


越美晴演じる“マリン”も、【わたしは真悟】のヒロイン“まりん”から引用しています。



この演劇を、20年経った現在、古屋兎丸が漫画化しました。


古屋兎丸は、「それを想起させ過ぎるから」という理由で、“マリン”から“カノン”に改名していますが、


わたしは真悟】の強大なる影響力から逃れられず、同じ漫画という表現方法もあって、


絵柄は丸尾末広ですが、楳図かずおの作品が思い出されて仕様がありませんでした。


閉じられた世界で展開する話、醜い存在として描かれる成熟した女、酷い目に遇うのはむしろ忠実な人間、


無垢で自己犠牲愛を持った強い少女、純真であるが故に容易に人を殺める残酷な機械、


意外な真犯人の登場、そして、ラストの讃美歌まで、


ここには、楳図かずおが描き続けてきたモチーフが、数多く見受けられます。


古屋兎丸が、このことに自覚的なら良いのですが、どうもそうでは無さそうです。


シリアスなものより、ギャグの資質をより有している漫画家だと思うので、そろそろ本道に戻って、専念して戴きたいです。