自殺報道は即刻中止しなさい
連鎖反応で恐ろしい事態になっているのに、何故マスコミは自殺報道を一切止めようとしないのだろう。
【首吊り松】
日暮れが迫っています。
カラスが、カアカアーと、寝ぐらにもどっていきます。
子供たちも、あそびつかれて、家路をさしています。
夕焼けがまっかです。子供たちの頬もまっかです。あしたまた楽しいあそびをしようと相談しながら歩いています。
その相談がまた、とてもたのしいのです。ですから、つい、わいわいとにぎやかに大声をたてて、心もはずんでしまいます。
ところが………突然です。
子供たちは一瞬、だまってしまいました。口をかたくむすんで、うつむいてしまったのです。
同時に背中を丸めると、たたたたっと大いそぎで走り出しました。
夢中で走るのです。
でも、長くは走りませんでした。
首吊り松が見えた十メートル前から走りだして、二十メートルぐらいです。
また子供たちは、走るのをやめて歩きだしました。
そして、さっきの、あしたのあそびの楽しい話を、続けようとするのです。
でも、どういうわけか、心は前のように、はずみません。
おそるおそる振り返ると、首吊り松は、あかね色の優景色の中に、黒々と立って見えます。
その一番下枝が、子供たちが、かけむけた道の上へ、たるみかげんにのびています。
その枝のために、幾人も人が首を吊って死んだという、おとうさんやおかあさんの話を、子供たちは聞いているのです。
その子供たちも、やがて大人になると、きっと自分の子供に、聞かせるのでしょうね。
「あの松の一番下枝でな、女の人が首を吊って死んだンや。
その女の人のゆうれいが、夜になると出るンや。だから、くらくなるまで、あそんでては、いかん。
ええな、わかったな」
おとうさんとおかあさんが、そう話して聞かせてくれた通りに……。
本当、死んじゃいけませんよ。