携帯電話で、蟲と妖怪と少女をどうぞ
拙著【肉さらい】が、携帯電話で読めるようになりました。
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http://wma.papy.co.jp/pfb/sc/item/1-111286/?uid=NULLGWDOCOMO
http://wmb.papy.co.jp/pbb/sc/item/1-111286/
- 少し抜粋-
ザトウムシがひょこひょこと歩いていく。
その一定しない歩みの為に何処へ向かっているのか計れないが、
迷いゆらめきながらもザトウムシは、より明るい建物の外へと進む。
その先には曇り硝子の嵌まった窓があり、外側に鼠がやって来て、
ザトウムシを見つけたのか中へ入ろうと爪を立て、尖った前歯を剥き出し、
白い腹を建物の内側へ見せ、きぃきぃと鳴く。
硝子に守られてはいるものの、それが理解出来ないザトウムシは
鼠の気配に気付いてふらつきつつ、素早く建物の奥の闇へと消えていく。
獲物を逃してしまった鼠は仕方無く窓から離れ、尖った鼻を動かし
食料となるべき物の臭気を捉えようとする。
そして鼠は廃墟の中庭部分の方からの腐臭を嗅ぎつけ、
食欲に因り興奮してはいるものの、周囲に注意を払って時折何度か止まり、走る。
そこには一匹の鼠が死んでいて、死んでいるにも関わらず、
躯全体を小刻みに震わせている。
よろしく、御一読のほどを m(。・ε・。)m