香山滋の怪獣ゴジラ
【クローバーフィールド】を観て、「さて我が国の正しい怪獣映画は」という事で、
勿論、【ゴジラ】が思い浮かぶ訳です。
初夏の某日、東宝のプロデューサー田中友幸さんが、わざわざ訪ねてこられて、
小生にひとつ映画の原作をお願いしたいと仰言る。
むろん、ぼくに白羽の矢が立てられた以上は、
一筋縄でいくストゥリーでないことは自分でもわかっているものの、
何か水爆を象徴するような大怪物を、おもう存分あばれさせてみたい、
という提案には、さすがものおじしないぼくも、
一時たじたじとならざるを得ませんでした。
(中略)
この種の空想科学物語を、小説として手掛けたのは、しかしこれが初めてではありません。
一時新聞を賑わした、マダガスカル沖で発見された「怪魚シーラカンス」、
今次の大戦で行方不明になったまま未だに発見されない「北京原人」、
そればかりか、そもそものぼくのデビュー作品である「オラン・ペンデク」にしてからが、
こうした一連の系列であろうと考えられます。
【クローバーフィールド】が元にしたのは、云うまでも無く「9.11」のテロ事件だった訳ですが、
【ゴジラ】も、本土に二度も原爆を落とされ、戦後も第五福竜丸の被爆事件の被害者となった
我が国で無ければ作れなかった映画であろう事も、また確かなのです。
もし、水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた、
世界のどこかへ現れて来るかもしれないのだ……」