本当の童話作家になった宮崎駿
10月になって、漸く【崖の上のポニョ】を観ました(……)。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080727
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_e509.html
(特に町山氏の「子供乗せてるのに暴走運転したり、よそ見運転する母親」には納得しましたが、
「あぶないなあ、こんな事、現実にやったら絶対死んじゃうよ」といった描写は頻出していたのです)
それより「嗚呼、宮崎駿はエンタテインメントを捨て、童話作家になったのだなあ」と痛感した次第です。
少なくとも、【もののけ姫】までの宮崎駿作品は、きちんとエンタテインメントしていたと思うのです。
物語が破綻しているなどとんでも無い、
宮崎駿作品の欠点は、あまりにきちんと作られていて、
訳の判らない、釈然としない「謎の場面」が登場しないところだと思っていた程でした。
(確か大槻ケンヂが、似た様な事云ってました、「完璧すぎて隙が無くて厭味だ」とか何とか)
決して作画の力だけで、全てを押し切って、細部の辻褄合わせを誤魔化してきた訳では無いと思います。
初のヒット作となった【風の谷のナウシカ】に、辻褄合わない箇所なんて、あったっけ?
(尤も、原作を読んでいた身としては、綺麗に大団円を迎えてしまって、
そこが不満で、今いち好きになれない映画でしたが)
【ポニョ】を観ながら思い出したのは、
【ピカピカのぎろちょん】や、【ビビを見た!】【ピストルをかまえろ】といった、昭和に著わされた童話でした。
そのどれもが、きちんと謎を解明する事無く、物語を終えてしまうのです。
しかし、だからこそ、子供の記憶には澱の様に残り、数十年経っても、消え去る事が無いとも云えます。
【もののけ姫】で、ある一線を突き抜けて、云わば燃え尽きてしまった宮崎駿は、
エンタテインメントを提供する事をやめ、本当に、子供たちに向けて、新しい童話を作り出したのだと思います。
そして今回の【崖の上のポニョ】にしても、ラスト、
「主人公が、世界を救う為の試練を、いかにして、くぐり抜けたのか」という描写を
明らかに放棄してしまっているではありませんか
(【もののけ姫】にも、その徴候が見られますが、
この映画は、“手塚治虫を殺し損ねた宮崎駿”だと捉えていますので、詳細はまた別の機会に……)。
子供たちにとって、「どうやって世界が救われたか」なんて事、どうでも良いのでしょう。
……だけど、【紅の豚】みたいに、大人の男が主人公で、大人の男同士バカみたいに遊びに夢中になって、
ラストの謎が余韻になる様な、そんな宮崎駿作品も、観てみたいんだよなあ。
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