わんぱたんの、でぃっく
1989年に出版された、【銀星倶楽部】のフィリップ・K・ディック特集。
この頃は、紆余曲折あった短編【追憶売ります】の映画化が、
シュワルツェネッガー主演、バーホーベン監督の「トータル・リコール」として本格的に始動し、
日本でも未訳作品や、サンリオSF文庫で絶版になっていたものが再刊されたりと、
巽孝之氏云うところの“第三次ディックブーム”が到来していました。
それから20年が経過した現在までに、
【変種第二号】が『スクリーマーズ』として、
【にせもの】が『クローン』として、
【少数報告】が『マイノリティ・リポート』として、
【報酬】が『ペイチェック 消された記憶』として、
【暗闇のスキャナー】が『スキャナー・ダークリー』として、
【ゴールデンマン】が『ネクスト』として、それぞれ映画化されています。
本書に掲載された対談や文章の内、今読んでも最も興味深いのは、
後藤将之氏の「フィリップ・K・ディックの社会思想」です。
【アンドロイドは電気羊の夢を見るか?】と、その映画化作品【ブレードランナー】を材料に、
ディックを社会心理学的視点から語った、素晴らしい文章です。
原作を単純化したものと捉えられていた【ブレードランナー】が、
その実、いかにディックの思想を反映した造りになっているかについて言及していて、
小説を脚色する際のお手本の最高峰として、【ブレードランナー】は存在するのではないかとさえ思えます。