毎年十月三十日がくると思い出す恐怖体験実話
あなたは、こんな体験をした事があるでしょうか?
夢とも、うつつともつかない、こんな体験を。
タクシーの運転手をしていれば、誰でも一度や二度は恐ろしい死の危険にぶつかった事がある筈です。
しかし、私のは特別でした。あれは確か、十五年程前の、お盆も間近い夏の夜でした。
一日の仕事を終えた私は、たった独りで会社の風呂に浸かっていた時でした。
「おい………おい」
陰気でひそやかなその声に呼ばれて、私はつい風呂場の窓を開けました。
しかしおかしな事に、声のした辺りには何の人影もありません。
何だ……。錯覚だったのか。
しかし今度こそ、はっきりと、その声は聞話しかけてきたんです。
「おい! 良く聴けよ。十月三十日だ。
わかったな。十月三十日だ。その日までに片付ける事は片付けておけ。
その日に、お前は死ぬんだからな」
何度も、その謎の声に話し掛けられ続け、
そうして、ついに運命の「十月三十日」がやって来たのです。
(TBSラジオ【夜のミステリー/“体験実話シリーズ”『十月三十日』】)
私:野沢那智
声:樋浦勉