アウトレイジは北野武の最高傑作か?
あちこちで結構絶賛されているので(特に「Cut」の渋谷陽一、褒め殺しかと思う程持ち上げ過ぎ)、
敢えてちょっと苦言(大好きな映画である事は間違い無いのだけれど、割り切れない想いもずっと残っている)。
※ネタばらしが多分に含まれているので、未見の方でこれから観ようと思っている方は読まないでくださいな。
北野武がやくざ映画を撮るという事は、過去の最高傑作とされる『ソナチネ』と比較されてしまうのは仕方無い事であって、
これを避けては通れない。
ただし、あまりに『ソナチネ』だけにこだわっていても、
それでは21世紀の現在、新作を作る意味も価値も無くなってしまうではないかという事になる。
にも関わらず物語としては、正に『ソナチネ』の呪縛から北野武自身が逃れられない事を公言しているのではないかと思える程同じであり、
同じ組内での抗争、親分から子分への裏切り、締め付け、粛正、そして始まる最後の抵抗といった、
やくざ映画の重要な要素が盛り込まれているとはいえ、ここまで『ソナチネ』に倣わなくても良いのではないかという展開である。
あとはキャラクターを見た時点で、後々の展開が予想出来てしまうのも問題で、
加瀬亮が状況を正確に把握して最後まで生き延びる事、小日向文世が自分の位置を確保しながら新たな親分につかえる事、
三浦友和が大親分に服従しておらず最後に裏切る事などは、物語の早々で判ってしまうのだ。
また今回の『アウトレイジ』で情婦が呆気無く殺されていく描写は、
『3-4X・10月』の、情婦をほっぽり出し結果的に彼女の命を救ったであろうという奥の深い展開に比して、後退としか云えない。
(過去作には本作の「何だ、早くも葬式の用意か」といった直接的な台詞、描写が一切無いのだ)
これは北野武のバイク事故後に作られた映画に顕著なのだが、判り難い、意味不明なカットは無くなり、
親切な描写、判り易いカットが頻出している。
そこまで描かなくても観客にはちゃんと理解出来るという事を周囲の人間、
特にプロデューサーが進言しなくてはいけないと思う。
だって親切にしたからって興行ちっとも良くなってないじゃん。
(だから意味不明をテーマにしたかの様な「TAKESHI'S」は傑作たり得たのではないか。)
観客に不親切であっても、エンタテインメント映画は作れる筈です。是非、そういった作品を作って下さい。
そんな北野武の映画が、切実に観たいです。
10人以上のキャラクターをほぼ全員目立たせて動かす事が如何に困難か、良く判っています。
だけど、それ以上の北野武映画を観たいのです。
それにしても日本の役者(だけに限らないかもしれないけど)はやくざ役だと輝くなあ。
ギラギラ油膜の様な感じを観ていると、韓国映画の素晴らしい役者達にも決して負けてないなと思います。
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