できない

hanoyshang2006-01-03



電車無いから


太ってるから


頭痛いから


二十歳過ぎてるから


時間無いから


うまくないから


眠いから


今日はもう疲れたから


OLIVIA「できない」)




一集落挙って不動様を信心していた。


その中で、夫婦と子供三人の一家が夕食の最中に、主人が箸をガラリと投げ出して、


「タッタ今おれに不動様が乗り移った」


と云いつつ凄い顔をして座り直した。お神さんは慌てて畳の上にふれ附した。


ビックリして泣き出した三人の子供も叱りつけて拝ました。


この噂が伝わると、そこいらじゅうの信心家が、あとからあとから押しかけて来て「お不動様」の


御利益にあずかろうとしたので、家の中は夜通し寝ることも出来ない様になった。


そのまん中に、木綿の紋付羽織を引っ掛けた不動様が坐って、恐ろしい顔で睨めまわしていたが、


やがて、うしろの方に座っている、紅化粧した別嬪をさし招いた。


その女は二三日前近所へ嫁入って来たものであった。


「もそっと前へ出ろ。出て来ぬと金縛りに合わせるぞ。ズッと私の前に来い。


怖がる事は無い。罪を浄めてやるのだ。サァよいか。お前は前の生に恐ろしい罪を重ねている。


その罪を浄めてやるから舌を出せ。もっと出せ。出さぬと金縛りだぞ……そうだそうだ……」


こう云いつつその舌に顔をさし寄せて、ジッと睨んでいた不動様は、


不意にパクリとその舌を頬張ると、ズルリズルリとシャブリ始めた。


女は衆人監視の中で舌をさし出したまま、眼を閉じてブルブルふるえていた。


すると不動様は何と思ったか突然に、その舌を根元からプッツリと噛み切って、


グルグルと嚥み込んでしまった。


女は悶絶したまま息が絶えた。


あとで町から医者や役人が来て取り調べた結果、不動様の脳髄がずっと前から


梅毒に犯されていることがわかった。


この事実がわかるとその村の不動様信心がその後パッタリ止んだ。


不動様を信仰すると梅毒になるというので……。


夢野久作「いなかの、じけん【花嫁の舌喰い】」)




RAFTERMAN  Am I bad?  Am I a life-taker?  Am I a heart-breaker?


(STANLEY KUBURICK / Michael Herr / Gustav Hasford "Full Metal Jacket" )




其の女の左肩には天使の、尻の右には人魚の刺青が有った。


天使には白のブラウスを脱がせた時に、


人魚に気付いたのは彼女が後ろ向きに下着を取ろうとしてバランスを崩し倒れた時であった。


彼女の天使が「しあわせあげる、しあわせあげる」と唄う様に囁いた。


人魚は「死にたくないなら、あたしを食べて」と流し目でお願いしてきた。


勿論、幸せになりたかったし、長生きもしたかったのだが。


女の躰に彫られた刺青がこうまで欲望を減退させるものとは知らなかった。


であるから勿体無いとは思ったけれども。


ふたつの刺青をナイフで削り取ってみた。


血膿の臭いが多少気になったが、まともな性交を遂げる事が出来た。


しかしながら天使と人魚の呪いであろうか。


幸せにもなれなかったし、長く生きられもしなかった。