ブレイルフォードが目撃した獣
1855年2月、イギリスは例外的に寒い冬に襲われた。比較的温暖な南西部でさえ凍りついた雪で一面が覆われた。
2月8日の朝、デボンシャー・トプサム村の学校長アルバート・ブレイルフォードは玄関から外に出ると、
雪の中に一列の奇妙な足跡が付いているのを見て好奇心を持った。
足跡はそれぞれ長さ10センチ位で、馬の蹄の様な形をしており、
有蹄動物が付けた跡の様に見えた。ただ、奇妙な事に、
足跡は一歩の真ん前に次の一歩があって、全く一直線をなしていた。
まるで動物が後足で綱渡りをした跡の様だった。
ブレイルフォードは足跡を付けて通りに出て行き、色々な顔見知りの人に其れを示した。
村人達の意見は、其れがどんな動物の足跡とも違うという点で一致した。
新雪の中をみんなで辿って行く内、謎は更に深まった。
足跡は或る庭の高い塀の所で消えていたが、塀の向こう側でまた続いていたのである。
しかも塀の上の雪は乱れていなかった。足跡の主は塀を一飛びで越えたか、
塀を貫いて進んだか、どちらかの様であった。
(Colin Wilson「 Enigma and Mysteries」)