象を殺した怪ガエル
「おい。沼のふちで象が苦しがっているぞ」
動物保護係のヘーニとボンボは、前方の沼のふちで5頭の親子づれの象が、地面をのたうちまわっているのを見つけた。
ここは、アフリカのケニア。1964年10月18日のことだ。
ふたりは馬を飛ばして沼のふちに来たが、5頭の象のすさまじい暴れ方に、ただ茫然としていた。
やがて、象はだんだん動きがにぶくなり、とうとう5頭とも地面にぐったり、のびてしまった。
「おい、カエルが!?」
ボンボは象の首のまわりに、アワをふいた大きなカエルが、びっしりとこびり付いているのを見つけた。
「このカエルが象を殺したのだろうか?」
ふたりは、今までに見たことも聞いたことも無い怪事件に顔を見合わせた。
「ううむっ」
ボンボの知らせで駆け付けた獣医もびっくりしていたが、ふたりに不気味なカエルを捕らえる様に云った。
「ぎゃあっ!」
おそるおそる1匹のカエルを手づかみにしたボンボは、悲鳴をあげながら、のけぞった。
「あぶないぞ!おそろしい毒を持っている!」
獣医は象の首からカギでカエルを掴みとるなり、大声をあげた。
そのカエルは、全身が14、5センチもあって、全身が黒ずんだ緑色をしており、頭部には太く鋭い針が付いていて、
そこから黄色い液体を出していた。足には三本の指があり、どれもナイフの様なツメが付いているという恐ろしいカエルだった。
調査にあたったケニア動物研究所のロロム教授は、
「カエルの針から出る黄色い液体は、アフリカコブラの毒よりもはるかに強烈で、ふだんは頭の皮膚の下にある袋に入っているが、
針を突き刺した瞬間、相手の体内に注ぎ込むのだ。世界には、約2千種類のカエルがいるが、こんな恐ろしいカエルは初めてだ」
と云っている。
(『世界の怪獣』)