猫殺しの山

hanoyshang2006-04-22

作 ・鈴木清順


出演・倉野章子/西田敏行神山繁



ナレーション(以下N)「彼女は街を歩くのが楽しみである。


と云うのも、彼女の胸を見て、男という男はゴクリと生つばを呑み込み、


女という女はキリキリ歯ぎしりをするからである。


それはど彼女のボインちゃんはケタはずれに大きいばかりか、素晴らしく綺麗なのである。


それは極上の水密桃の様に青みをおびているかと思うと、パッと薄桃色に光るのである。


而も彼女のそれに一度さわった幸運を持つ男の証言によると、触れれば弾かれるような、


それでいて、やんわり包み込まれるような、まことに有化登仙の気味あい、と云うのだから、


彼女がそれを武器にこの世を生きていても、誰も文句を云う筋合いはない。


つまりパトロンが、それもいいおじいちゃんが彼女の豪勢な生活の面倒を見ているのである。



パトロン「可愛い子ちゃん、それにこの胸は世界一素晴らしい」


彼女「いや−ん。パパったら、私より私の胸に惚れてるみたい」


パトロン「何云ってるんだ。パパが愛してるのはお前のすべてさ」


彼女「うれしい。じや、吸わしてあげる」


パトロン「ああ、冥利に尽きるわい。じや、吸うよ」


彼女「あ−ツ痛!痛い! 痛いわ!!」


パトロン「ど、どうした?」


彼女「胸が、おっばいが、痛い!!パパ、助けてえ! パパぁ」


(SE・救急車のサイレン)



医者「(無愛想に)はい、どうしました」


彼女「あのう、先生、ここが」


医者「はい、じゃあ見せて下さい。(息を呑んで)おおっ。これは! 」


彼女「はあ?」


医者「い、 いや、失礼。見事なお胸で。ええ、では診てみましょう。(優しく)息を吸って。吐いて。


はい、では横になって。(ゴクリと生つばを呑み)で、では触りますから、ビックリなさらないで。


ウーン、ウーン、あァッ!」


(SE・どさりと倒れる音)


彼女「あら先生、どうなさったの!大変!失神しちゃった! 救急車だわ!!」


(SE・救急車のサイレン)



パトロン「ああ、やっと胸を撫でおろすことが出来るよ。ほうかい、ほうかい。


レントゲンに異常がなければ大丈夫だろう。さ、こっちへおいで」


彼女「パパ、そこに顔をうずめて眠っちゃいけないわ」


パトロン「この谷間が私にとっては何よりの安息の場なんだよ」


彼女「聞いてちょうだいパパ。猫の遊太郎ちゃんが、パパと同じ、私の胸の谷間に顔をうずめて死んだのよ。


窒息死したのよ」


パトロン「猫の遊太郎ちゃんが?猫だろ、そいつぁ」


(SE・電話の音、受話器を取る音)


彼女「はい、もしもし。あら? あのう」


パトロン「誰だ?」


彼女「え? ううん、誰でもないわ」


パトロン「貸してみなさい! 誰だ!君は?」


電話の声「そんなことしてたら、殺されるぞ」


パトロン「誰だ!」


電話の声「ゆうたろう」


(SE・電話の受話器を置く音)


パトロン「猫の遊太郎だなんてとんでもない話だ。わしの目を盗んでよくも!」


彼女「ゆうたろうなんて私、知らない。私の知ってるのは猫の遊太郎ちゃん。


あっ、あっあ、痛っ!」


パトロン「だ、大丈夫かい?」


彼女「パパ、今日はゆるしてぇ、ごめんなさい」




時間経過




N「可変い子ちゃんは大理石造りの風呂に浸かっていた」



彼女「どうしてあなたは私をいじめるの? パパが来ると急に痛くなったりして。パパが嫌いなの?」


N「と、おっぱいが大きく上下に動き、お湯を(SE・湯を叩く育)バッチンと叩いた」


彼女「あ−ツ! こんな馬鹿な、信じられない事ってあって? 今のは嘘よね?」


N「おっばいは、また動いてみせる」


彼女「ほ、ほんとにあなた動くの?」


N「おっばい、うなずく」


彼女「あなた、あなたに私の云うことが判るの?」


N「おっぱい、またまたうなずく」


彼女「それじゃ、あなたは私の味方?」


N「おっばい、イエスとうなずく」


彼女「ダーメよ、パパが来た時はおとなしくしてなくちゃ。パパをしくじったら大変なんだからぁ」




時間経過




N「可愛い子ちゃんとパパは、仲良くベッドに」


パトロン「お前、本当に遊太郎なんかいないんだな?」


彼女「パパ、こんな時に、いじめないで」


パトロン「本当にいないな、本当だな!」


(SE・バチンと顔を殴打する音)


パトロン「痛いっ! おい! 何をする!!」


彼女「あ、え?なに?」


パトロン「『なに』って、お前、今わしを殴ったろ?!」


彼女「そんなことしないわ」


パトロン「 何云ってるんだ、ここにはお前とわしの二人しかいないんだぞ」


彼女「でも私」


パトロン「もういい!わしぁ帰る!」


彼女「パパ、ごめんなさい、パパ、パパぁ」


(SE・ドアの開閉音)



彼女「あなたでしょう、パパをぶったのは」


N「すると、おっぱいが、ぶるんぶるんと答える」


彼女「あなたのしわざと判らないからいいようなものの、もし判ったら大変ヨ。


お願い、もうパパをぶたないで」


N「しかし彼女のおっぱいは何とも答えなかった」




時間経過




パトロン「どういう風の吹きまわしなんだ。そんなものして」


N「胸自慢の可愛い子ちゃんは、ブラジャーなんかしたことなかった。


それが、今日は特別、頑丈なブラジャーをしているのだ」


パトロン「さあ、こっちへおいで。パパが外してあげるよ」


彼女「でも、今日は取りたくないの」


パトロン「何云ってるんだ。お前の胸が見られないなんて、来た甲斐がないじゃないか」


彼女「でも、知らないわよ」


パトロン「知るも知らないもないよ、さあ」


N「と、パパの手が伸びるや否や、ブラジャーは自ら(SE・はちきれる音)はち切れ、勢い善く飛んだ」


パトロン「う−ん、矢張りお前の胸は素晴らしい。じゃ、チューするよ」


(SE・顔を殴打する音)


パトロン「こりゃ何だ! お前のおっばいが、わしを、わしをぶん殴ったぞ!!」


彼女「だから私、知らないって云ったでしょ?」


パトロン「ううん、ゆ、許せない!!」


(SE・胸を叩く音)


パトロン「こん畜生! このおっぱい野郎! わしの顔を殴りやがって! 思い知ったか! この!」


彼女「ああ、パパッ、痛いっ、ゆるしてぇ」



N「パパがおっぱいを力まかせに殴ると、おっぱいはピュッ! と乳みたいなものをパパの顔にひっかけた」


パトロン「こいつ、わしに乳を、乳を引っ掛けやがったぞ! この無礼者が!!


うう、これ、バカに小便臭い乳だな!」


(SE・乳からの発射音、つづけて)


パトロン「おお臭い! 臭くてたまらん!こんな訳のわからん気持の悪いおっぱい持ちの女なんか、お払い箱だ!」


(SE・ドアの開閉音)


彼女「だから云ったでしょ。パパもう来ないわよ。あんなお金持ちのパパ、二度と見つからないわよ。


これからどうするの、あなた」


(SE・電話の音、受話器を取る音)


彼女「はいもしもし? どなた?」


電話機の声「ニヤー、ニヤーン。ニャゴー」


彼女「ゆう、遊太郎ちゃん??」



おわり