アリスの駆け落ち

hanoyshang2006-04-26

家の正面の木の下にはテーブルが据えてあり、三月兎と帽子屋は、其処でお茶を飲んでいました。


眠り鼠がふたりに挟まって坐っていましたが、眠っているも同様で、他のふたりがクッション代わりに使っていました。


眠り鼠の上に肘をついて、その頭越しに喋っていたのです。


眠り鼠はずいぶんいやだろうな」アリスは思いました。「でも、寝込んでいるから気にならないかもしれないけど」


テーブルは大きなものでしたが、三人はそのはじっこにひと固まりになっています。


「席は無い!席は無いよ!」と皆はアリスが来たのを見ると叫びました。


「ずいぶん空いてるじゃないの!」むっとしてアリスは申しました、そしてテーブルの片隅の大きなひじ掛け椅子に坐りました。


「葡萄酒はいかが?」と三月兎が元気づける様に声をかけました。


アリスはテーブル中を見回しましたが、あるのはお茶だけでした。


「葡萄酒なんて見えないわ」とアリスは云いました。


「ぜんぜん無いさ」三月兎が応えました。


「だったら、無いものをすすめるなんて。ずいぶん失礼じゃなくって」とアリスは腹を立てて云いました。


「呼ばれもしないのに此処に来て坐るなんて、すいずん失礼じゃないかね」三月兎が返しました。


「あなたのテーブルとは知らなかったのよ」アリスは云いました。「三人分より、もっと大勢のしたくがしてあるもの」


「あんたの髪は刈らないといかんね」と帽子屋が云いました。アリスを先刻から大変珍しそうに眺めていたのですが、


口を開くと、いきなりこう云ったのです。


「他人のことにあれこれ口出ししな様にって、教わらなかったの」アリスはいくぶん厳しい口調で云いました。「とっても失礼だわ」


帽子屋はその言葉を聞きながら、眼を真ん丸にしていました。しかし口に出した言葉といえば


「大鴉が机に似てるのは何でかね?」



(気ちがいどうしのティーパーティー)