殺しの道具と機械《畜生・むしけら篇》
欧米の主食は肉である。
「肉食の民」にとって、食肉の機械化は生存を制する鍵であった。
華麗なる欧米の食卓の背後に、食肉用の畜類を如何にして能率良く処理するかの工夫の体系、
皆殺しの道具と機械、畜生篇の雄大なロマンが隠されているのである。
日本でも、欧米分明の影響を受けて、食生活にも肉類の占める比率は伸びつつある。
その間、欧米で高度に発達した「死の機械化」の成果は取り込まれてきた。
しかし、日本での過去と現在との比較で見る限り、日本は明白に「草食の民」の域を出ていない。
有機体に働きかける道具・機械の発達は欧米「肉食の民」にあっては、牛、豚をはじめ、馬・兎といった畜生が対象となる。
これに対して日本「草食の民」では、小動物や、むしけらが対象となる。
ここに、「草食の民」の手になる、「皆殺しのうた」をハミングさせてみよう。
【豚の処理方法 要約】
1.豚の後脚に鎖をかける。
2.豚を吊り上げる(豚を無防備な単なる物体にする)。
3.喉元を切って血を抜く。
4.死んだ豚をレールの上に載せて移動させる。
5.豚を蒸気熱で奇麗に洗う。
6.体を剃る機械で体毛を頭から脚元まで完全に剃る。
7.後脚の間に鉄鉤を渡し、無限ベルトに吊るす。
8.コンベアーの上で胸部と背部を拡げ、頭部もほとんど切り落とされた状態になる。
9.獣医が検査して不良肉は別のラインに移す。
10.内臓が取り除かれ処理される。
11.脊髄がふたつに裂かれ、肉の洗滌と検査が行われる。
12.検印が押されて冷却室へ保管される。
豚の屠殺風景。のどかなものです。
グリナーの牛を“安楽死”させる道具
(山口昌伴 “ MECHANIZATION ”)