こわいはなし

hanoyshang2006-01-18



東京・霞ヶ関法務省の隣のビルには、どういう訳か、箒を手にした幽霊が現れる。


雨がしとしと降る夜、コンクリートの天井から竹箒で掃く音が聴こえる。


手を触れないのに、重いドアがギーッと開き、暫くすると、バタン! と閉まる。


そのうえ、「ケッ! ケッ!」という女の笑い声が響き、


更に天井から青い火の玉が落ちて、夜警の人を襲うのだ。


(「箒を持った幽霊」)




満月の夜、崖っぷちの宙に浮いていた其の幽霊は、麦わら帽子を被り、


野良着姿、真っ黒い肌で白い歯を剥き出し、


直立不動の姿勢で、脚の方はボーッと透けて見えた。


伊藤晴雨画伯が東京の日暮里で見た幽霊だが、


誰の霊なのか判らないと云う。


(「生きた人間の様な幽霊」)