リュウグウノツカイ
1930年、フランスのアントン・ブラン博士は、300メートルの水深で、2メートル近い体長をしたウナギの幼生を発見した。
ウナギが成魚になる迄には幼生の18倍になる事を考えれば、このウナギは30メートル近くになるだろうと推測された。
18世紀の終わり、デンマークの船が西アフリカの沖で、凪ぎのために停まっていた時の話である。
船長のヤン・マグヌス・デンスは、船員たちに船の清掃を命じた。彼らは舷側から突き出た板の上に乗り、仕事をしていた。
その時突然、怪物が現われ、巨大な2本の腕でふたりの船員を捕まえ、海に引きずり込んだ。
3番目の腕がもうひとりの船員を捕らえたが、彼は必死に策具にしがみつき、仲間たちがその腕を叩き切って彼を救った。
彼らは怪物を銛で仕留めようとしたが、海の中に姿を消してしまった。
最初のふたりの船員の死体は見つからず、3番目の船員も、その晩死んだ。
叩き切った怪物の腕は、非常に太く、先が尖っていた。長さは約7.5メートルあり、大きな吸盤が付いていた。
1860年、ブリティッシュバナー号の船長 ウィリアムテイラーの報告である。
4月25日、南緯12度7分8秒、東経93度52分。太陽をマストの上に受け、船は震動している感じだった。
何事かと思い、二等航海士を見に行かせた。
彼は船長に、索具の所に上がって来て船の舳先を見る様にと告げた。
大きな蛇が、舳先から突き出た斜めのマストを揺すっているのが見えた。
体長は少なくとも90メートル、太さは女性の膨らんだスカート位で、背中は黒く、
毛むくじゃらのたてがみの様なものがあり、額に角があった。
蛇はマストを揺すり続け、やがて帆や索具までもがバラバラになってしまった。
と、船が汽笛を鳴らすと、蛇は驚いて海へと消えてしまった。
あとには、壊された舳先だけが残された。
(『深海の怪物たち』)