ほんものの亡霊
其れは、忘れもしません。昭和27年8月20日午前3時半ごろの事です。
其の夜は仲間の居る海辺の病院に一泊させて貰う事になりました。
夜が更けて、ひとつの部屋に案内され、ベッドに入りましたが、夜中にふと眼を覚ますと、
「大高先生、誰かが外に居るんです」というA君の声です。
「どなたですか。なにか、御用がおありですか」
私が声をかけると、足音が、はたと途絶えて、
「寒いんです………。とても、寒いんです……」
それはそれは、寂し気な声が聞こえてきました。
「それならどうぞ、中へお入りになりませんか」
その途端、ドアがキーと開くと、いきなり、本当に氷の様に冷たいものがベッドの中に入り込んできたのです。
「こらッ!」
私が夢中で叫んだ途端に、
目の前に、この亡霊 が現れたのでした。
※大高博士は現在青森市内に住むお医者さんです