逢魔が時
風がやんでしまいました。
静かな、静かな、夕景色です。
どんよりとした、夕空は、刻々、暗さを増していきます。
緑の葉を繁らせたお化け銀杏の樹が、黒く見えています。
一日の終わりです。
昔はこの時刻を、「逢魔が時」と呼んで、恐れていました。
魔ものが、夜を待ちきれずに、現れる時間だというのです。
魔ものは、太陽の光が大きらいなのです。
「いつまでも外で遊んでいてはいけません」
やさしいお母さんが、子供を呼んでいる声が、聞こえてきます。
魔ものは、子供が大好きです。
みずみずしく、やわらかい肉が、とてもおいしいからです。
(『こわい怪談画報』)